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塾頭コラム#90:「わかる」と「できる」は全く違う?


授業中、生徒に問題の解き方を説明すると、「わかった!」とうれしそうに頷いてくれることがあります。教師としても、これはうれしい瞬間です。ところが、その数日後。同じような問題を解かせてみると、「あれ?どうやるんだっけ……」となる。保護者のみなさんにも、似たような経験があるのではないでしょうか。「この前、一緒にやったよね?」「塾でも習ったはずなのに、どうしてできないの?」実はこれ、決して珍しいことではありません。なぜなら、「わかる」と「できる」は、まったく違うからです。
●「わかる」は、ゴールではない
先生の説明を聞いて、「なるほど!」と思う。解説を読んで、「そういうことか!」と納得する。これはもちろん、大切な学習です。しかし、この段階では、まだ「できる」ようになったとは限りません。たとえば、スポーツの上手な人からフォームを教えてもらい、「なるほど、そうやって身体を動かすのか」と理解したからといって、その瞬間から同じようにできるわけではありません。楽器でも同じです。指の動かし方を理解したからといって、すぐに上手に演奏できるわけではありません。勉強も同じなのです。説明を聞いて理解できることと、何も見ずに自分の力だけで答えまでたどり着けることの間には、思っている以上に距離があります。
●「できる」とは、自分で再現できること
「できる」とはどういう状態でしょうか。私は、「何も見ずに、自分の力で再現できること」だと考えています。数学なら、解説を閉じても自分で式を立てて解ける。英語なら、日本語訳を見なくても意味が出てくる。社会や理科なら、教科書を閉じても問われた内容を説明できる。つまり、「見ればわかる」「聞けばわかる」ではなく、「何もなくても、自分から取り出せる」。ここまで来て、初めてテストで使える力になります。
●「間違える」は、「できる」までの途中にある
ところが、子どもたちは間違えることを嫌います。一度教えてもらった問題を間違えると、「やっぱり自分は数学が苦手だ」と思ってしまうこともあります。保護者の側も、「この前やったばかりなのに、もう忘れたの?」と言いたくなることがあるでしょう。でも、ここで少し見方を変えてみてください。「わかった」→「自分でやってみる」→「間違える」→「もう一度確認する」→「もう一度やってみる」→「できる」。これが、学習のごく自然な流れなのです。むしろ、「間違える」という段階を通らずに、「わかる」から一気に「できる」へ進めることの方が珍しいのかもしれません。
●「わかった?」より、「できるかやってみよう」
だからこそ、私たち大人の声かけも少し変えてみたいところです。説明したあとに、「わかった?」と聞けば、多くの子どもは「わかった」と答えます。本人も嘘をついているわけではありません。その瞬間は、本当に「わかった」と感じているのです。そこで一歩進めて、「じゃあ、何も見ずにもう一回やってみよう」と声をかける。すると、本当に「できる」状態になっているのかが見えてきます。もしできなかったとしても、それでいいのです。「まだダメ」なのではありません。「わかる」から「できる」に変わる途中にいるだけです。
勉強とは、「わからない」を「わかる」に変えることだけではありません。「わかる」を「できる」に変えるところまでが勉強です。九大進学ゼミでも、授業で説明して終わりではなく、
演習し、確認し、もう一度取り組むことを大切にしています。
「わかった!」その瞬間は、大きな一歩です。でも、そこで終わらない。
「じゃあ、自分でできるかな?」もう一歩先まで進んでみる。
その積み重ねが、本当の学力をつくっていきます。